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こすぎ法律事務所

弁護士 石坂 想


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遺産分割について

相続問題

遺産分割について

遺産を巡っては、例えば、長男が親の遺産を独り占めして他の兄弟姉妹に遺産の詳細を知らせずに一部しか分割しようとしなかったり、遺産を公平に分けたくても遺産の種類や量が多かったり、相続人の数が多かったり、さらには相続人の間で感情的な対立が生じていて冷静に話し合うことが難しい・・・などといった問題が生じます。
また、生前、被相続人に多額の財産を贈与してもらっていた相続人がいたり、被相続人の介護等で献身的に尽くした相続人がいる場合に、そういった事情を遺産相続の中でどこまで考慮すべきか、ということが法律上問題となります。

このような場合、互いに利害の絡む相続人同士の間では話がまとまりにくく、長期化・泥沼化してしまうことも稀ではありません。また、家庭裁判所に調停や審判を申し立てるにあたっても難しい法律問題が生じることが多々あり、適切な遺産分割が実現できないおそれがあります。

このようなときこそ、弁護士にご相談いただければ、第三者的立場から法律に則った公正な遺産分割が実現できるよう適切な助言・指導を得ることができ、早期の解決も期待できる場合があります。お早めにご相談されることをお勧めいたします。

遺産分割の進め方

家庭裁判所における遺産分割調停は、上の図のように階段を進んで行くようなイメージで進行していきます。

相続人間の協議で解決する場合も、検討の方法としては一緒です。

【1】相続人の範囲

まず、被相続人の相続人が誰かを確定します

*戸籍の記載が事実に反する場合(例えば本当は親子関係にないのに嫡出子として届けられている)、養子縁組が無効である場合、認知が無効である場合、などは、遺産分割の前に人事訴訟等の手続が必要です。

親子関係の問題について詳しくはこちら

*相続人の中に認知症等によって判断能力を欠く人がいる場合、成年後見人等を選任する必要があります。

最近は相続人も高齢の方であることが多く、このようなケースは珍しくありません。

【2】遺産の範囲

原則としては、被相続人が、亡くなった時点で有していて、現在(遺産分割の時点)でも残っている財産が、遺産分割の対象となる遺産です。

*現在の判例によれば、可分債権(例えば預金や単純な貸付金など)については、相続発生と同時に当然に分割され、遺産分割の対象とならないとされています。一般的には、預貯金は遺産として扱うことが多いと思いますが、それはあくまで「相続人全員が合意している」ことを建前としています。

また、被相続人の債務(借金)についても、遺産分割の対象となる遺産ではありません。

*時々、「相続発生時には財産が残っていたけれども、遺産分割までに誰かが処分してしまった、使ってしまった…」ということがあります。不動産に関しては登記制度が厳格であるためこのようなことはほぼありませんが、預貯金に関しては結構あるようです。

この場合は遺産分割とは別に訴訟等で解決することが必要になります。

よく問題になる使途不明金問題についてのブログはこちら

*遺言書や遺産分割協議書で相続の仕方が決まっている財産については、遺産分割の対象になりません。

「遺言が無効である」とか、「遺産分割協議が無効である、解除された」、といった主張をしたい場合、遺産分割ではなく、別の訴訟等がまず必要になります。

遺言無効確認については、こちら

【3】遺産の評価

遺産分割の対象となる遺産のうち、不動産等について評価額を決定します(そのモノの値段を決める、ということです)。

なお、全く価値がないもの(例えば被相続人の普段着、生活用品など)については、遺産分割の対象にはならず、「形見分け」などとして、相続人間で分配することとなります。

*不動産(土地、建物、マンション)の価格はどのように算定されますか

基本的に「相続発生時の時価」が評価額となります。

時価とは抽象的には市場価格のことです。市場でどの程度で取引されるか、ということなので、これを定める明確な基準はありません。相続税算定のための評価額と一致するわけでもありません。調停等では「路線価」や「固定資産税評価額」等といった基準に基づいて合意することはありますが、これも、時価を算定(推測)するための一定の根拠として用いられている、という位置づけです。

実際に不動産を売却して遺産分割を完了させる場合であれば、その結果できちんと数字が出ますので問題はほぼ生じません。しかし、通常は、当該不動産に住んでいる相続人がいるため売却は困難であるとか売却をするということ自体に争いがあるという事情があることがほとんどですので、実際は、双方が時価について(推測で)主張することになります。

協議や調停では、通常、双方が時価の算定に関する資料(不動産業者作成の査定書、不動産鑑定士作成の鑑定書等)を提出し、合意できるよう調整する、という流れとなります。

双方の評価額に差があり、合意ができない場合は、協議であればまとまらないので調停ということになりますし、調停では家庭裁判所から第三者(通常は不動産鑑定士)に鑑定を依頼するということになります。

家庭裁判所が専門家に依頼した鑑定の結果は、相当の信用度があります。鑑定結果が出た場合、その判断手法が著しく不合理であるような例外的場合を除き、当該鑑定結果が採用される可能性が高いです。

鑑定

* 株式の時価はどうやって算定するのですか。

上場会社の株式の場合、市場価格が容易に算定できますので、それを評価額とします。

非上場会社の株式の場合は、価格の評価が非常に困難です。会社の決算状況から算定するということになりますが、①②③など、複数の判断手法があり、確定的な手法はないのが現状です。

どうしても合意ができないようであれば、これも鑑定して(税理士や公認会計士が鑑定する)定めるしかありませんが、非上場会社の場合、対象となる株式それほどの価値がないことも多く、鑑定を実施しても費用倒れに終わって誰も得をしない…という事案も多く見られます。鑑定を行うかどうかについては、経済的合理性があるか、十分検討して判断したほうがよいでしょう。

このような場合、解決方法としては、双方の主張する評価額の間で合意をしてしまうか、あるいは株式については法定相続分で機械的に分割してしまうというようなこともあります。

* 車や船舶の時価はどうやって算定するのですか

車については、車検証等の資料から、これも市場価格を算定することになります。車については中古車市場が大きく、またきちんと機能しているので、評価が困難ということはほぼないでしょう。

船舶についても同様ですが、こちらは車ほど市場が大きくないので、市場価値を算定するのはやや困難です。購入額を基準に減価消却して算定する方法をとることもあります。

 

* いつの時点での時価を算定するのですか

遺産の評価額を定める基準時は、相続発生時(被相続人の死亡時)です。

【4】各相続人の取得額

【2】で確認し、【3】で評価した遺産について、法定相続分に基づいて各相続人の取得額が決まります。ただし、特別受益や寄与分が認められる場合には、それらを考慮して各相続人の取得額を修正することになります。

特別受益

寄与分

【5】遺産の分割方法

【4】の取得額に基づき、各相続人に分割します。方法としては以下の方法があります。

現物分割

遺産の現物をそのまま分割する方法です。土地であれば分筆し、各相続人の名義にすることになります。また株式であれば、誰々が何株取得する、等とします。

意外に勘違いされている方が多いのですが、現物分割が遺産分割の原則形態であり、現物分割が不可能あるいは相当でない場合に、はじめて他の分割方法が検討されるべきとされています。

代償分割

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